2020年 11月 18日
読書記録「キリン解剖記」 |
読書記録 郡司芽久「キリン解剖記」
抄録は以下の通り。
『長い首を器用に操るキリンの不思議に、解剖学で迫る!「キリンの首の骨や筋肉ってどうなっているの?」「他の動物との違いや共通点は?」「そもそも、解剖ってどうやるの?」「何のために研究を続けるの?」etc. 10年で約30頭のキリンを解剖してきた研究者による、出会い、学び、発見の物語。』
佳作です。
ノンフィクション系としては今シーズン一番かもしれません。
ただ、テイストとしてはエッセイに近い、軽さで、研究者が書いたゆえの硬い印象は皆無です。
なので、誰が読んでも、それこそ小学生でも楽しめると思います。
この作者は、”好きこそものの上手なれ”を体現化しています。
といっても、ストレートで東大に入れるおつむがある故なのですが。
こんな一文があります。
『私は、誰かの役に立つような研究を、とか、世界を救うような研究を、という高尚な志をもって研究の道に入ったわけではない。ただただ、「子供の頃から好きだったものを追求したい」という一心だった。』
この作者を最初に知ったのは、TBSラジオ「たまむすび」でのゲスト出演です。
この本も十分平易に書かれていますが、さらにわかりやすくキリンについて語っていました。
たしかに、私たちは、キリンについて知っているようで知らないことがたくさんあると、改めて教えてもらいました。
といっても、教科書的/講義的ではなく、しかし、クイズ的ではなく体系的にまとめられています。
それがわかりやすさに寄与しているのだと思います。
最後にこう締めくくられています。
『無目的、無制限、無計画。
「何の役に立つのか」を問われ続ける今だからこそ、この「3つの無」を忘れずに大事にしていきたい。』
本来学術的研究とはこうあるべきではないでしょうか?
今話題の、日本学術会議についても同じでしょう。
研究として価値の高いものが尊重されるべきで、その時の政府の方針に反しているかどうかなど二の次なのです。
おすすめ度:☆☆☆☆☆(解剖学やキリンへの興味の有無は関係なく、どなたにでもおすすめできます。とりあえず、平易な科学エッセイとして読んでみればいいと思います)
追記)2021/01/09放送のテレビ朝日の「博士ちゃん」で著者が出演されていました。
生物の進化博士ちゃんが国立科学博物館を訪れ、そのガイドとしての出演でした。
by k1right
| 2020-11-18 00:00
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