2015年 10月 12日
読書記録「ヒポクラテスの誓い」 |
読書記録 中山七里「ヒポクラテスの誓い」
抄録は以下のとおり。
『法医学教室に入ることになった研修医の真琴。傍若無人で傲岸不遜の教授に辟易するが、彼の眼差しが声なき遺体の真実を暴いていく…。死者の声なき声を聞く迫真の法医学ミステリー。』
『こんなに文章とストーリー展開がうまい人だったかな?と改めて思うぐらいプロットの進め方がうまく、飽きさせずグイグイ読ませるし、論理的に破綻していると思われる点もない。』
これは、おそらく作者が「このミステリーがすごい!」出身であることからくる私の偏見だろう。
いつも思うのだが、新本格系の作者は、中編集になると格段に面白い場合が多い。おそらくよく批判される”人物が描けていない”という点をスポイルでき、トリックに最重点を置いた作品が書けるからだと思う。が、ひとつ間違うと、トリックから逆算しただけの、鼻につく作品となりかねない
私が好きな展開は、個々に独立した中編が、最後の一遍に収斂しカタルシスを得る、というスタイルで、まさにコレがそれに相当する。
法医学ものは、どうしても(その時点の)最新のテクノロジーに流れがちだが、
(パトリシア・コーンウェル以来の伝統か?)
必要以上にテクノロジーに依存しないのがいい。うんちくは適度なら良いのだが、最新のテクノロジーはすぐに陳腐化するし、全部説明するとうざいしわかりにくいし、かと言って省略し過ぎるとSFや魔術めいたものになりかねない。
二遍目に”鷲見(すみ)”さんが出てきて、最後の一遍に”須見(すみ)”さんがでてきて、
さらに、”マスミ”とか”カスミ”とか”スミレ”とか”スミ”絡みの登場人物名が多数あるので、なにか意味があるのかと勘ぐったが、私には関係性が発見できなかった。もしかしたら何らかの意図が隠されているのかもしれない。
おすすめ度:★★★★☆(新本格系医療系ミステリ中編としては高水準)
by k1right
| 2015-10-12 00:00
| 読書記録
|
Comments(0)