2015年 03月 02日
KISSはヘヴィメタルではない |
2015/02/24のNACK5のキラスタでDJの土屋礼央氏がKISSの特集において、ヘヴィメタル、パンク、ハードロックをグチャグチャに解説されていたので補足しておく。
これらは歴史的に捉えると非常にわかりやすい。
むしろ現在視点で音楽性などでカテゴライズすると混乱しやすい。
(”キス”と発音される方も居るがこれが非常にこそばゆい感じがする)
ハードロックは70年代のハードめなロックンロールで、ギター主体のロックである。
この頃になると”ロール”という感覚はなくなってくる。
ムーブメントというよりもジャンルの一種であり、KISSもこの系譜にある。
その先にジャーニーとかが出てきてコマーシャリズムに吸収されていく。
大昔のNHKの「ロックの歴史」ではこの辺りで、ベイ・シティ・ローラーズが紹介されていたのが印象的だ。
「そしてロックはメッセージを失った」。
そして70年代半ばに、プログレッシブ・ロック(以下プログレ)がでてくる。
ELPやピンク・フロイドよりキング・クリムゾンあたりを思い浮かべるとよりややこしいが、クラシックの要素を加え歌詞も文学性が高く技術的にも高度である。
しかしプログレは高度に発展したために主にプアな若者層から嫌われてしまい次のムーブメントを呼ぶ。
そこでカウンター的に登場したのがパンク・ロック(以下パンク)である。
当初は既存の形式に対抗しツンツンの短髪、シンプルなコード進行で、シンプルな演奏で、プアな若者層から圧倒的な支持を得た(しかしこれも商業的であったことが後に暴露された)。
話をややこしくするのがベルベット・アンダーグラウンド系のNYパンクであるが当時はあまり話題にはなっておらずあくまでマイナー領域のムーブメントであったとの印象が強い。
これが日本の90年前後のバブル絶頂期のインディーズブームのブルーハーツへとダイレクトに繋がるのだから面白いものだ。
90年代に入ると長髪のツンツンヘアとか、長い髪を振り乱してのパンクスタイルでの演奏とかさらにややこしくなっていく。パンクのメッセージ性をそのままに表現力を増したテクニカルなバンドも出現したり、ボーカルのみパンク系とかボーダレス化が進む。日本では更に妙な先鋭化が進みスターリンとかじゃがたらとかのパフォーマンスを極めるバンドも出てきて自滅していった。
余談であるがデビュー当時のジュディマリも”ユキのパンキッシュなボーカル”と評されていたこともある。
その後80年代に登場したのがヘヴィメタル(以下ヘビメタ)である。
当時の代表的なバンドはアイアンメイデンであった。
ここでややこしくなるのが、既存のイギリスのハードロック系のバンドで、ディープ・パープル系の流れである。
ルックス的にも(当時はヴィジュアルという表現はしなかった)音楽的にも大きな差異はない。
ややテンポが早くギターがメタリックでテクニカルであるのとボーカルが無闇にシャウトするくらいの差だ。
そのため、後付でこれらのバンドもヘビメタとカテゴライズされることが多い。
例えばKISSの悪魔系演出とオジー・オズボーンの黒魔術系演出が似通っていることも同類視される一因だろう。
全く同じバンドがそれまでハードロックと言われていたのがヘビメタと呼ばれるようになったケースもある。
さらに短命に終わったニューウェーブ系のムーブメントやネオアコ等の単発のムーブメントを経て90年代以降はボーダレスになる。元JAMのポール・ウェラーのスタイルの変遷などが象徴的である。
またU2も当初は正統派パンクと評価されていたが、今となってはそのような評価をされることもないだろう。
以上を雑にまとめてしまうと、
ハードロック→(特化/先鋭化)→プログレ→(カウンター)→パンク→(カウンター)→ヘビメタ(様式化)、となる。
ここで話をKISSに戻すと、”ヘビメタ”という言葉が生まれる前からメジャーシーンで活動していたので、ジャンルとしてはハードロックでしかありえない。音楽性としては同じままだから宗旨替えというわけでもないし、すでにメジャーであったしアメリカのバンドなのであえてヘビメタを名乗る必要もない。
KISSについては、いまでは代表曲とされる「ラヴィン・ユー・ベイビー」であるが、リリース当時は”KISSがついにディスコに手を出した”といわれ(今これを聞いてディスコソングと感じることは殆ど無いだろう)セールス的には大成功であったが、コアなファンは離反し、以降長い衰退の道へ至るのである。
土屋氏に代表されるリアルタイムで体験していない世代にとって、ヘビメタとハードロックの違いは無い同然だろう。
そもそも音楽性に差異は殆ど無いのだから。
しかし、後付でカテゴライズする居心地の悪さを感じざるを得ない。
まぁ、こういうことはおっさんの戯言して揶揄されても一向にかまわないのであるが。
by k1right
| 2015-03-02 00:00
| 音楽
|
Comments(1)
Commented
by
あ
at 2017-03-30 01:04
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でも80年代以降の音を聞くとヘビメタの影響を無茶苦茶受けてますね
ヘビメタと言ってもさしつかえないくらいの
彼ら自身時勢の影響で変わってるんじゃないですか?
本質はハードロックバンドであると私も思いますが
ヘビメタと言ってもさしつかえないくらいの
彼ら自身時勢の影響で変わってるんじゃないですか?
本質はハードロックバンドであると私も思いますが
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