2016年 03月 26日
読書記録「標的(上下)」 |
読書記録 パトリシア・コーンウェル「標的(上)(下)」
抄録は以下のとおり。
『P.コーンウェルが仕掛けるシリーズ史上最大級のサプライズ。十三年の歳月を経て“亡霊”がいま蘇える…。検屍官シリーズ第22作。』
『張りめぐらされた伏線。衝撃の真相。P.コーンウェルが放つシリーズ最高傑作!検屍官シリーズ第22作。』
おそらくこのシリーズが発祥であろうパターンである、
登場人物全員が頭がおかしい、
シリーズを一通り読んでおかないとなにがなんだかわからない、
パターンです。
最近の「検屍官」シリーズがこれらのパターンの作品群と明らかに異なっている点は、作者(+編集者)まで頭がおかしい、という点です。
訳者が変わってからその傾向が一層顕著です。
これが、訳者によるのか作者によるのかは、私にはわかりません。
説明ゼリフがやたらと細かい時と、全部すっ飛ばされているケースが混在するので、パラノイアチックというより、スキゾフレニー的です。
これは読者の推理のための材料が詳しくて、そうでないものは簡略化されているのではないので、数ページを費やしていても、そこでおしまい、ということもあります。要はその時点での作者の興味の濃淡であり、プロットへの関与度ではないということです。
普通の人でも、相手と話をしながら、相手以外の周囲を見たり聞いたり、他のことを考えたり、過去や未来を思いやることなどをしていますが、それをリアルタイムで文章化すると本作の序盤のような展開になります。
それは本人視点では実際に起こっていることであって、全くもって正しいのですが、文章に落とすと何がなんだかわかりません。
頭のなかで思っていることは、連想ゲーム的に時制も超え、何かがキーになって突発的に思い浮かぶものもあります。
それらがリアルタイムで記述されるので、読者としては、追うだけ無意味というものです。
最近の「検屍官」シリーズでは上下巻の下巻の残り1/3くらいのところで唐突に真犯人が登場します。
ミステリとしては反則ですが、「検屍官」シリーズでは第一作からこの傾向は有しているのでそこを指摘するのは無意味です。
また『シリーズを一通り読んでおかないとなにがなんだかわからない』ににもかかわらず、いつの間にか過去の設定が変えられているケースもあります。
死んだと思っていた人物が再登場するのは幾度もあります。
本作でも同様です。
下巻の残り1/3(=全体の5/6過ぎ)で真犯人が唐突に現れるので、その前の部分は軽く読み飛ばして構いません。人物関係を頭に入れておく必要もありません。
動機は、犯人がシリアルキラーだから、という一点に収斂します。
シリーズ物として完結していないので、というか、本作では主犯と従犯ともに逃亡しているので、次作以降もこの流れが踏襲されるはずです。
一度リセットされたはずの「検屍官」シリーズですが、出版社が諦めないかぎり、このまま続くのでしょう。
驚きなのは、自分を含め(爆)、このシリーズを読み続けている読者がいる(のであろう)ということです。でなければリリースされないと思うのです。
おすすめ度:★☆☆☆☆(「検屍官」シリーズの腐れ縁で辛抱強く読み続けているの読者のみ、その他の方はかなり辛抱強く読んでも、何がなんだかわかりません)
by k1right
| 2016-03-26 00:00
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