2015年 08月 12日
8/11 色丹島「ビザなし交流」に関する各社報道の比較 |
2015/08/11(火)の色丹島「ビザなし交流」に関する各社報道の内容が異なる点が多く興味深かったので比較してみました。
まず、釧路新聞より見てみます。
『北方領土の元島民とロシア人島民が互いに訪問する「ビザなし交流」で、色丹島を訪れていた日本側訪問団61人が10日、根室港に戻った。帰港後、市内で開かれた訪問団の記者会見には7人が出席した。色丹島を舞台に、初の北方領土映画「ジョバンニの島」の原作・脚本を手掛けた杉田成道さん(71)は「やっと行けて感無量。不幸な戦争があっても、根底に流れる人と人との心の交流は変わらないと感じた」と感動を語った。』
とくに、色丹島の医療事情に関して言及はありません。
次に、北海道新聞です。
『北方領土の元島民とロシア人島民が互いに訪問する「ビザなし交流」で、色丹島を訪れていた日本側訪問団61人が10日、根室港に戻った。両親が国後島出身の坂上範夫団長(65)=函館市=は解団式で「さまざまな交流を通じて島の人たちの思いの一端を垣間見て、心と心のふれあいができた」とあいさつした。
訪問団は8、9日に色丹島を訪問。学校や幼稚園のほか、7月中旬にロシアの保健相が視察した新病院を訪れた。内科、外科、産婦人科、歯科を備えた総合病院で、病院関係者は「救急患者も受け入れられるようになった」と医療環境の改善を強調した。
ロシア人島民の住宅では、軽食などで歓待を受けた。日本人墓地では、団員で色丹島出身の得能宏さん(81)=根室市=の祖父の墓などを参った。
往路の国後島・古釜布(ユジノクリーリスク)沖では、同行した民主党の鷲尾英一郎衆院議員がロシア国境警備局に拿捕(だほ)された「第10邦晃丸」の伊東正人船長と船舶電話で連絡を取った。鷲尾氏は「食糧は十分あるが、船の燃料が心配だと言っていた。狭い船内での生活にストレスがかかっているようだ」と述べた。(同行記者団)』
朝日新聞は何もありませんでした。
読売新聞は
記名が”(同行記者団)”とあり、ほぼ北海道新聞と同じです。
ところが、毎日新聞だけが全く異なることを伝えています。
『外務省は10日、北方領土・色丹島の生後1カ月半の先天性心不全を患うロシア人女児を治療のため、交流船「えとぴりか」で根室市の根室港に緊急搬送したと発表した。女児は釧路市の釧路赤十字病院に運ばれ、精密検査を受けた。今後、同病院か札幌市の北海道大病院で治療を行う予定。
搬送されたのはアレクサンドラ・プジャエバちゃん。母イリーナさん(34)に抱かれて根室港に上陸した。
根室市によると、女児は7月下旬に行われた北方四島の住民支援のための現地ニーズ調査の際、日本人医師によって先天性心不全の疑いがあると診断された。7〜10日に色丹島を訪れていたビザなし訪問団が現地の病院を訪れた際、日本外務省に要請があり、交流船で搬送した。
北方四島からの人道支援の患者の緊急搬送は2007年10月、大やけどを負った国後島の当時1歳の男児(完治)を受け入れて以来2例目。【本間浩昭】』
ロシアの病院関係者によれば「救急患者も受け入れられるようになった」とのことですが、色丹島のロシア人女児を治療のため、交流船「えとぴりか」で根室市の根室港に緊急搬送した、とあります。
おなじ、交流船「えとぴりか」に関する記事なのですが、三者三様です。
しかも、毎日新聞の記事が正しいとすれば、北海道新聞と読売新聞の記事は誤報とさえ思えます。
そもそもの疑問は2015/8/7(金)の北海道新聞の以下の記事です。
『【根室】7月23~27日に行われたビザなし交流で色丹島を訪れた訪問団に、穴澗(クラボザボツコエ)で新設された病院「南クリール地区色丹分院」が公開された。ロシア政府は総工費15億円を掛け3階建ての病棟を建設。小児科や産婦人科もあり、同島の念願だった出産できる環境を整えた。このほか、新たな診療所や保育所の建設計画もあり、人口を増やすための投資が加速する。一方、根室は来年でお産ができなくなってから10年となる。
「根室で子供が産めないことは知っています。この病院に来てもいいんですよ」。訪問団が視察した25日、病院のアレクセイ・プロスクーリン院長(35)が冗談交じりに話した。
病院は昨年12月に完成し、北方四島の中で最も新しい。7月中旬には、ロシア保健相が視察するなど同政府肝いりの施設で、院長は「村の分院としては十分な設備。人口が増えることを見込んでこれだけの施設を造った」と説明した。
医師8人を含む48人が勤務。1、2階は外来、3階は入院スペースで産婦人科、小児科に加え、内科、外科の25床がある。デジタルレントゲンやマンモグラフィーは最新の機械といい、「クリール(北方領土を含む千島列島)社会経済発展計画」(2007~15年)に基づき、今後は光ファイバー回線を整備し、インターネットを通じてサハリンなどとカルテや診察画像をやりとりする計画もある。
色丹島では、新病院が完成するまで十分な医療設備がないため出産できず、妊婦は、サハリンなどに入院する必要があった。色丹島で妊婦として登録する女性は年間最大100人ほどで、病院の新設により母子ともに健康であれば、色丹島で産めるようになる。
子供の増加は、北海岸の斜古丹(マロクリーリスコエ)の保育所でも顕著だ。保育所では現在、待機児童は93人に上る。待機児童の数は07年には45人だったが、毎年、増え続けているとし、保育所向かいの敷地に新たな学校と保育所を建築中。色丹島民は「来年には完成するのではないか」と言う。
色丹島の人口は約2500人。発展計画に基づき20年までに、日本政府が人道支援目的で供与した斜古丹の診療所に替わる施設を新築する動きもある。ただ、アゼルバイジャン出身で色丹島に住む女性は将来、故郷に帰る予定と明かす。「島に若い人は多いけど、年を取れば快適な住環境を求めて、本土に戻る人が多い。ここは働く場であり、一生暮らす場所ではない」
一方の根室は、人口減少が止まらない。病院では分娩(ぶんべん)再開のめどが立たず、産婦人科医が全国的に不足していることに加え、首都圏から離れた根室では医師が赴任したがらないのが実情だ。来年からロシア200カイリ内でのサケ・マス流し網漁が禁止されることを受け、さらに市中経済が衰退する恐れがある。
7月27日に根室港に下りた訪問団員は「返還のためには、ロシア人に豊かな日本の姿を見せることが大切になる。返還運動を後押しするためにも、もっと国は根室に投資すべきではないか」と指摘した。(水野薫)』
と、色丹島を出汁に根室をディスる記事です。
道東での北海道新聞のシェアは他紙との比較にならないぐらい高いのですが、このような意図のわからない記事が多いとの意見が一部にあるようです。
2015/08/29追記
根室に続いて、オホーツク北部での出産が困難になるようです。
出産困難地域を見える化するとなにか新しいものが見えてくるかもしれません。
『【遠軽】遠軽厚生病院(オホーツク管内遠軽町)は28日、10月から常勤の産婦人科医がゼロとなり、出産と婦人科疾患の診療を休診することを明らかにした。産婦人科常勤医3人のうち2人が旭川医大に引き揚げることが決まっていたが、残る1人も9月末での辞職を決めたため。同病院はオホーツク北部の2次医療圏の中核病院として、妊婦の大半の分娩(ぶんべん)を受け入れており、今後、同地域での出産は困難な状況となる。
遠軽厚生病院は10月以降、月に2週の計4日間、旭川医大から非常勤の産婦人科医の派遣を受け、32週までの妊婦の検診を行う。32週以降については、妊婦の意向に沿って北見や旭川など他の医療機関を紹介する。
新規の婦人科疾患の受診はできなくなり、治療を受けていたがん患者などについては、希望を聞いて、他の医療機関か遠軽厚生病院の他の診療科を紹介する。』
※以上はリンク切れに備えての直接引用です。
◯本日のコネタ
道東の某旅人宿で屋根裏に野生動物が住み着いてそれをブログやFBのネタにされているところがあります。
それは比較的珍しく(近縁種は高尾山でも見られますw)愛らしい動物ではあるのですが、宿泊施設として衛生面はどうなんでしょう?
以前住んでいた家の屋根に、動物に住み着かれたことがあったのですが、当然糞はするし、そこから虫(主にダニやノミの類)と、糞尿らしい異臭が発生して処理に困ったことがありました。
さらに、堂々とこんな写真も掲載しています。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=856409221119964&set=pcb.856409277786625&type=1&theater
なお、北海道及び弟子屈町では以下の様な取り組みを以前から行っています。
『釧路総合振興局と町などは1日、「野生大麻ゼロ作戦」を行い、町内に自生する野生大麻を一斉に除去した。道は2009年度から、毎年6~9月を「野生大麻・けし撲滅運動」実施期間に指定し、野生大麻の発見や除去、不正けしの栽培防止に力を注いでいる。同作戦は、道内の自生地を重点地域として除去に取り組んでいるもので、この日は同振興局と町職員、弟子屈署員と町防犯協会、地域住民ら約50人が参加した。参加者はグループに分かれ、町内5カ所で作業を実施。高さ2~3㍍ほどの野生大麻を根から抜き取った。』
さらに酒類の無許可販売もされていたり、大島を襲った台風による強風で大量に収穫したやまぶどうを発酵させていることも発表されています。
まるで70年代の福生のようなお話(cf.「限りなく透明に近いブルー」)ですが、現在進行中のお話です。
2015/09/04追記
どういうわけか、9/2になって以下の記事が出てきました。
『ロシアのメドベージェフ首相が北方領土の択捉(えとろふ)島を訪れた8月下旬、同島や国後(くなしり)島では元島民の2世や大学生らによる「ビザなし交流」が行われた。』
10日もたってなぜ?と思っていると、
『外務省の林肇(はじめ)欧州局長は1日、ロシアのトカチョフ農業相が北方領土の択捉島を訪問したことをめぐり、同省にロシアのアファナシエフ駐日大使を呼び、「北方四島に関する日本の立場と相いれず、国民感情を傷つけるもので極めて遺憾」と抗議した。』
とあるので、実際は9/1の”ロシアのトカチョフ農業相が北方領土の択捉島を訪問”のフォロー記事のようです。
あぁまぎらわしい・・・。
by k1right
| 2015-08-12 00:00
| 北海道新聞
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